「下肢静脈瘤」の診断を受けて、ひとまずは「手術はしない」という選択をされた方はもちろんのこと、「下肢静脈瘤」の手術を受けた方であっても、「足は血液がたまりやすいところ」という身体の仕組みは変わりません。
「足に血液をためない」生活を心がけることが、症状の改善、悪化の防止、再発予防につながります。

■「弾性ストッキング」をうまく活用しよう!

「弾性ストッキング」は、特殊な編み方により弾力性を高めているため、普通のストッキングに比べて足に高い圧力がかかるようにできています。また下から上にかけて徐々に圧力が弱まるように作られているので、下から上への血液やリンパの流れを促す働きがあります。
「高い圧力で足を締め付けてしまうと血流が悪くなるのではないか」、と心配される方が多くいらっしゃいます。しかしそういったことは起こりません。
ホースから出る水を想像してみてください。ホースから流れ出る水の勢いが弱いとき、ホースの口をギュッと潰すと水の勢いが良くなる、といった経験を持たれている方も多いと思います。同じ量の水ならば、通り道が細いほうが流れる勢いがよくなります。
つまり「弾性ストッキング」により、適度に足を締め、静脈を圧迫することで血液の流れが改善するのです。そういった効果により、足に血液が溜まりにくくなり、「むくみ」、「だるさ」や「こむら返り」といった症状が改善していきます。
「下肢静脈瘤」の診断を受けたが、手術はとりあえずしない、でも「足のだるさ」など、症状が気になるといった方、治療はしたけれど、足がむくみやすい状態が続いている方、スッキリ楽になったが、今後のことも考えて予防していきたい、と考えられている方は着用をお勧めします。

「弾性ストッキング」着用の際には、まずは足のサイズを測定します。
足首と足のふくらはぎのサイズを測定し、商品のサイズ表に照らし合わせて当てはまるものを選びます。適切な圧が足にかかるように、適切なサイズのストッキングを選ぶ必要があります。
また、「弾性ストッキング」には膝下までのハイソックスタイプ、太ももまでカバーするストッキングタイプ、お尻までカバーするパンティストッキングタイプがあります。また、それぞれにつま先のあるタイプとつま先のないタイプがあります。そういった中で、履きやすさや病状などを考慮して適切なものを選んでいただきます。
予防的に着用する場合や「血管内焼灼術」術後の合併症などに備える場合は、基本的にハイソックスタイプで十分です。「弾性ストッキング」は持続して履いていただくことが一番大事なことになります。
治療効果のあるものの中では自分にあった履きやすいものを選ぶのが良いでしょう。

「弾性ストッキング」には、足にかかる圧力の強さにより幾つかの種類があり、治療内容により使い分けられています。一般的に「下肢静脈瘤」の「保存的治療(対症療法)」や「血管内焼灼術」術後に用いられるのは基本的には、弱中圧タイプ(20-30mmHg/30-40hPa:高齢者や女性向け)、中圧タイプ(30-40mmHg/40-50hPa:男性向け、血管内焼灼術後などに使用)となります。
しかし、かかる圧が強くなれば履きにくくなりますので、中圧タイプや弱中圧タイプの着用が難しい方や、下肢静脈瘤の予防のみを目的とされる方では、弱圧タイプ(20mmHg/20hPa前後:一般的には入院時の静脈血栓予防に使用)の着用でも十分であると考えます。
自分にあった「弾性ストッキング」を担当医師と相談しながら選んでいきましょう!

「弾性ストッキング」の着用のタイミングですが、症状を取るための目的でしたら、一番足の負担がかかるときに着用すべきです。すなわち「立っているとき」や「座っているとき」など、足が心臓より下にあって、血液が返っていきにくい状況のときです。
足の「だるさ」や「こむら返り」は夕方や夜間になればなるほど、起こりやすくなりますが、それは「昼間の負担」の蓄積により、その結果として症状が一日の後半や夜間に起こっているだけなのです。
従って「症状のある時」に着用するよりも「足の負担が実際に掛かっている時」に着用することが好ましいのです。
逆に夜間就寝時は、心臓と足の高さはほぼ同じとなりますので、「症状が強い時期」を除いては、夜間は「弾性ストッキング」を外すことが可能になります。
また、後でも述べることになりますが、足の血液やリンパの環流に対しては、足の筋肉、特にふくらはぎの筋肉の運動により、筋肉ポンプ作用が大きな働きをしています。しっかりと足の筋肉を使うことで、足からの血液はより返りやすくなるのです。
従って、足の血液が返りにくくなる最悪の組み合わせは、「運動もせずにじっと立ったまま、座ったまま」の状態です。こういった機会が多くなる「立ち仕事」の方などは、予防も含めて、特に「弾性ストッキング」の着用をお勧めいたします。
「妊娠中」の方においても、「下肢静脈瘤」が発生または悪化しやすい時期ではありますが、手術は避けたほうがよく、症状の改善や、病気の進行を防ぐためにも「弾性ストッキング」の着用が勧められます。

「弾性ストッキング」とうまく付き合おう!

「弾性ストッキング」を着用するときに、いちばんの問題点は「履きにくい」ことです。
「弾性ストッキング」は弾力性を高めるために特殊な編み方をしていますので、普通のストッキングに比べて、はるかに硬くて伸びにくく、容易に履くことができません。硬くて履けない、手が痛くなる、といった声もよく聞かれますが、ちょっとしたコツで履けるようになったりします。
履いてみて楽になるなら、できるだけ履けるように、上手な履き方を習得しましょう。また履くためのいろいろな補助器具も開発されていますので、そういった事も含めてご相談いただければ、と思います。

また、「弾性ストッキング」着用で起こる不具合のいちばんは、「お肌のトラブル」です。
頻度として多くはないのですが、「弾性ストッキング」を履くことで、「弾性ストッキング」の繊維との摩擦でかぶれたり、ストッキングのゴムの部分でかぶれたり、汗で蒸れてしまったり、ということが起こる場合があります。そういった場合は、保湿剤などを塗ったり、履く時間を調節したり、履き慣れた普通のストッキングの上から弾性ストッキングを履いたり、といったことを試してみましょう。
他の不具合としては「ゆるい」、「ずり落ちる」というのも良く聞かれます。ストッキングタイプではガーターベルトを使ったり、「弾性ストッキング」の上から普通のストッキングを履いたりするのも手です。
また「ゆるくなった」と感じる場合には、むくみが改善してサイズが合わなくなっていたり、「弾性ストッキング」が劣化してゆるくなっていることも考えられますので、医療機関で相談していただければいいでしょう。

いずれにせよ、「弾性ストッキング」は症状を取るためのものですから、絶対に履かなければいけないものではありません。デメリットの方が強いと感じるのでしたら、無理に続ける必要はないと考えます。

■足の運動を習慣づけよう!
~足の筋力アップ、仕事の合間に深呼吸やちょっとした運動を~

足が心臓へと戻っていくときに2つのポンプ作用が欠かせません。
ひとつは呼吸によるポンプ作用です。息を吸う時には胸腔内圧が下がり、胸の方向へ血液が引き上げられる力が働きます。それにより、足から心臓へ血液が返っていく流れが出来上がります。
そして、もうひとつが、足の筋肉のポンプ作用です。足を動かすことで、静脈が筋肉のリズミカルな圧迫を受けるようになります。筋肉が収縮(ふくらむ)、弛緩(ゆるむ)を繰り返すことで、血液が上へ上へと押し上げられます。とくにふくらはぎの筋肉は「第二の心臓」といわれるほどポンプ作用が強く、足に溜まった血液を押し上げます。ふくらはぎの筋肉を鍛えることが、足を健康に保つ秘訣にもなります。
そのためには、こまめに歩くことも大事ですし、ふくらはぎの筋力をアップさせる運動(スクワットやかかとの上げ下げなど)も推奨されます。

また長時間の立ち仕事やデスクワークをしている人は、仕事の合間にできる運動をするだけでも、大きな予防になっていきます。
立ち仕事の合間には、つま先立ちを繰り返したり、その場で足踏みをしたりを、1時間毎にするだけでも効果的です。デスクワークなら時折、椅子に浅く腰掛けて、背もたれにもたれかけてダラーンとして体が一直線になるような姿勢をとり、深呼吸をしながら、足を前後に動かしたり、足を回したりの運動で、血流の改善が見込めます。歩く機会をこまめに持つことも血液の滞りを防ぐには有効です。
日々の生活の中で少しだけ運動を心がけるだけでも、長い期間経てば、結果が違ってくることになるのです。

1日の最後に足のケアを!~入浴してマッサージ、お休み前の体操、でむくみの解消と血液の流れの改善を目指そう!~

1日の終りに、ぬるめの湯にゆっくり入ることで筋肉の緊張が緩み、末梢の血管が広がって、全身の血行が改善されます。不快な症状を招く原因となる老廃物も、足から流れ出されることになります。
また足に水圧がかかることも溜まった血液を心臓に戻すことになります。さらにマッサージなどを行えば、効果は高まることになるのです。

マッサージのこつですが、強く押し付けないことが肝心です。
むくみなどは皮膚の表面近くで起こっているので、手のひらでやさしく、さすり上げるように行うだけで効果的です。また、マッサージ方向は常に下から上へ、です。
まずは太ももを膝から足の付根まで両手を使って足を包み込むようにしてさすりあげます。
太もものマッサージをしばらく行ってから、次は膝下のマッサージに移ります。このときも下から上へ、足首から膝までを同様に両手で足を包み込むようにしてさすりあげていきます。
例えば、浮き出た血管をいじったら破れて出血してしまうのではないか、と心配する人もいるようですが、どんなに強くマッサージをしても血管が破れることはまず、ありません。だからといってギューギュー押し付けるマッサージをしたとしても、血行促進にあまり意味がありません。
ゆっくり、やさしく、撫でるようなマッサージだからこそ、微小な血管までの血行を促進できるのです。

お休みの前に、さらに流れを改善する体操を行えば、より効果的となります。
仰向けに横になり、リラックスした状態で、まずは足首の体操。つま先を立てたり伸ばしたりする運動、足首をぐるぐると動かす運動を行います。それから腰を浮かせることが可能でしたら、エア自転車こぎなども良いでしょう。
さらに両手両足を天井に向けてブラブラさせるブラブラ体操なども効果的です。
もちろん、無理な姿勢をとって、体を壊しても意味がありません。できる範囲で、軽く行うことで十分でしょう。

食生活の改善!~水分をしっかりと摂る、症状の起こりにくい体作りを~

食生活の改善、といっても、これを食べれば「下肢静脈瘤」の症状が良くなる、「下肢静脈瘤」にならなくなる、といった都合の良い食品はありません。
ただ「下肢静脈瘤」のリスクに「肥満」や「便秘」といったものがありますので、「肥満」にならないようにすること、また「便秘」を解消することが、「下肢静脈瘤」のリスクを減らすことになるのです。
バランスの良い食事を心がける、食物繊維などを意識して摂る、塩分を取りすぎない、など基本的なことではありますが、日々の心がけが、長い目で見れば病気を起こさせないことにつながっていくのです。
 また、体内に水分が足りない状態、いわゆる「脱水状態」というのは、血液の粘度を高めてしまい、血液の循環は悪くなります。ただでさえ溜まりやすい足の静脈の循環が「脱水」などで極端に悪くなれば、血栓などができてしまい、病状を深刻化させます。
適度な水分を摂ることも、血行の促進には非常に重要なことです。
日常の生活から、病気のリスクを無くしていく、ことが大事である、と言えるでしょう。